正式名称「腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)」と呼ばれるランナー膝。
ランニングを頻繁に行うランナーたちの発症が多いことから、ランナー膝という名称のほうが浸透しています。
おもに、膝の外側が痛くなるランナー膝ですが、痛みの程度や回復までの期間は人によってさまざまです。
本ページでは、整骨院で10年間以上多くのランナー膝を抱えたランナーの施術を行ってきた「中村」が、治療期間やストレッチを含めた自分でもできる対処法など、ランナー膝のすべてをお伝えさせていただきます。
ランナー膝でお悩みの人は、ぜひ最後までご覧ください。
ゆらぎ整骨院 院長 中村
医療機関運営のメディカルフィットネス施設 代表トレーナー
フルマラソン自己ベスト3時間1分
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ランナー膝(腸脛靭帯炎)とは
ランナー膝こと、腸脛靭帯炎はその名称のとおり、腸脛靭帯が炎症を起こすスポーツ障害です。
腸脛靭帯とは、太ももにある大腿骨の外側から、膝下にある脛骨の外側へ付着している靭帯のこと。ランニング動作をはじめとした膝の曲げ伸ばしのときに、この腸脛靭帯が何度も擦れてしまい炎症を起こしまうのが腸脛靭帯炎です。
痛くてランニング動作はおろかウォーキング動作も難しくなる人がいれば、軽いランニング動作であれば問題なく実施できる人など、症状には個人差があります。
ランナー膝の対処方法
膝の外側の痛みで、ランナー膝が疑われる場合は、まず以下の対処方法を実践してみてください。
アイシング
炎症が起きている場合、もっとも手軽で適切な対処方法がアイシングです。
膝の外側の痛みを感じる部分を冷やすことで炎症緩和の効果が期待できます。
ポイントは、痛みを感じたらできるかぎり早期にアイシングを実施すること。
20~30分のアイシングを実施したのち、2~3時間の間隔をあけて再度アイシングを行います。
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ストレッチ
対処方法としてのストレッチの実践はケースバイケースです。
軽度なランナー膝では、ストレッチを行うことで筋肉の血行が改善され、痛みの緩和に効果的な場合があります。
ただし、痛みがひどい場合のストレッチは、筋肉に負担を掛けるリスクをともなうためおすすめできません。
ランナー膝における、おすすめストレッチにかんしては本ページの後半部分でくわしく紹介しています。すぐにご覧になりたい人はこちらから。
安静
ランナー膝による痛みを1日でも早く回復させたい場合は安静がもっともおすすめです。
ただし、数日間ランニングを行わないことは、症状の回復と同時にパフォーマンスの低下を生むことも知っておかなければなりません。
「安静にすべきか?」「トレーニングを続けながら回復の道を探るべきか?」
ひとりで悩んでも解決できないランナー膝の場合は、専門家の力を借りてみましょう。
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ランナー膝(腸脛靭帯炎)の治療内容&治療期間
ランナー膝の治療は、病院やクリニックなどの医療機関。または、接骨院や鍼灸院などの代替医療機関で受けることができます。
治療内容はそれぞれの施設で異なる場合がありますが、代表的なものをご紹介します。
治療内容
ランナー膝に対する治療内容は以下のとおりです。
なお、厳密には接骨院や鍼灸院は代替医療のため「治療」ではなく「施術」を提供する施設であることを予めお伝えさせていただきます。
物理療法
低周波治療や超音波治療などの物理療法は、多くの施設で実施されている代表的な治療方法です。
物理療法は、痛みの緩和や筋肉の強化・血流改善などの効果が期待できます。
手技療法
手技療法とは、施術者の手で筋肉へアプローチをしたり、動きの悪くなっている関節を動かしたりする療法のことです。
物理療法よりも繊細に、症状や状態をみならが施術を行うことができる一方で、施術者により技術が大きく異なる療法でもあります。
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テーピング(固定)
テーピング固定は、関節の動きを抑制して痛みを緩和させる効果が期待できます。
ただし、テーピングをして動きの抑制をすると、代償的に他の関節への負担が大きくなる観点などから、専門家の間でも実施のタイミングや是非についての見解が分かれています。
ステロイド注射
病院やクリニックなどの医療機関では、痛みが強い場合やなかなか回復がみられないランナー膝に対してステロイド注射が処方されることがあります。
症状の緩和には効果的ですが、数週間~数ヶ月ほどで再発する可能性もあるため、他の治療方法との組み合わせが重要です。
治療期間
ランナー膝の治療期間は「何をゴールとするか」で少し話が変わります。
-
- 「症状の回復」をゴールに設定した場合
ランナー膝による膝の痛みは、安静をとることで1週間ほどすれば症状は回復するでしょう。
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- 「パファーマンスの維持」をゴールに設定した場合
大会が近いなどのさまざまな理由でこのゴールを設定する場合は、ランニングを続けながらの治療となります。期間は1~2ヶ月ほどかかることがあります。
- 「根本的な改善」をゴールに設定した場合
痛みの回復ではなく、二度とランナー膝をくり返さないことに重きを置くことになります。ランナー膝の原因を探り、改善点を洗い出し実践する。このような作業が必要となるため、期間は半年~1年ほどと長期に渡る可能性があります。
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ランナー膝の原因
先ほど少し触れましたが、ランナー膝をくり返さないためには原因を見つけ出し改善することが重要です。
ランナー膝の原因といえば、一般的には「オーバーユース(使い過ぎ)」が広く認知されていますが、オーバーユースはあくまでも「きっかけ」であり原因ではありません。
では、ランナー膝の原因とはどのようなものがあるのかを以下で解説していきます。
骨格の歪み
骨盤の歪みや内反膝(O脚)など。従来の体のバランスの乱れが原因でランナー膝を引き起こすことがあります。
とくに内反膝(O脚)は、膝が外側に出っ張ってしまうため、物理的に腸脛靭帯が擦れやすくなるため注意が必要です。
骨格の歪みを予防・改善するためには、日常生活の姿勢や体の使い方を見直すことからはじましょう。
脚組み、横座り、椅子に浅く腰掛けるなどの不良姿勢をしないよう努めるだけでも大きな効果が期待できます。
筋肉が硬い・柔軟性がない
筋肉が硬くなると、腱や靭帯が引っ張られる状態になります。その状態でくり返しのランニング動作を行うと、ただでさえ引っ張られて負担を感じている腸脛靭帯に、さらなる負担を掛けてしまい炎症を引き起こしてしまいます。
筋肉が硬くなる原因は、ストレッチやウォーミングアップ不足などが代表的です。ただし、生活サイクルの乱れや、偏った食生活などの日常生活が原因で筋肉が硬くなることもあるため規則ただしい生活を心掛けましょう。
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ランニングフォームが合っていない
骨格の歪みもなく、筋肉の柔軟性も高いにもかかわらずランナー膝になってしまう人は、ランニングフォームが合っていない可能性があります。
「走る」という単調な動作にも、多くの走法があるのはご存知ですか?
自身の体型や特徴に合ったランニングフォームで走ることができなければ、ランニングのなかで何万回もくり返す単調動作は大きな負担となります。
自分に合ったランニングフォームのくわしい解説は以下のページにまとめています。よろしければあわせてご参照ください。
ランナー膝におすすめのストレッチ
ランナー膝の改善&予防に効果的なストレッチ方法はさまざまですが、なかでもおすすめのものを3つ厳選してみました。早速、今日から実践してみてください。
大腿筋膜張筋のストレッチ
ふくらはぎ(下腿三頭筋)とアキレス腱が結びついているように、腸脛靭帯は大腿筋膜張筋と呼ばれる筋肉と結びついています。つまり、大腿筋膜張筋をストレッチすることは、腸脛靭帯の柔軟性を高めてくれるためランナー膝の予防に効果的です。
【ストレッチ方法】
① 座位の状態で膝を90度に曲げます。
② 左脚を右脚にクロスさせます。
③ 右腕で左膝を押し込むようにします。
④ 左の太もも外側に伸びを感じれば成功です。
⑤ 反対の脚と腕で②~④をくり返します。
⑥ 各3セット行います。
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腸腰筋のストレッチ
腿(もも)を引き上げる動作に関与する腸腰筋。ランニング動作に欠かせない腸腰筋が硬くなるとランニングフォームが崩れやすくなり、ランナー膝の原因にもなるため適度なストレッチの実施をおすすめします。
【ストレッチ方法】
① 一方の足を前に出し、体重を前に乗せます。
② 後ろに残した足の太もも前が伸びていれば成功です。
③ 10秒キープ⇒足の入れ替え⇒3セット行います。
脊柱起立筋のストレッチ
膝とは無縁に感じる腰から背中にかけてのストレッチですが、脊柱起立筋は姿勢を保持する筋肉です。
ランニング中の姿勢を長時間保つためには脊柱起立筋の力は必要不可欠です。脊柱起立筋が硬くなり機能性を失うとランニングフォームが崩れてランナー膝を引き起こします。
【ストレッチ方法】
① うつぶせの姿勢になります。
② 両手を使って状態を起こします。
③ 腰の部分に伸びを感じることができれば成功です。
④ 5秒キープ⇒3セット行います。
※腰の反りすぎは腰痛悪化のリスクもともなうためご注意ください。
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何をしてもランナー膝が治らないときにすること
ここまで、ランナー膝に対しての治療方法や対処方法などをお伝えさせていただきました。
しかし、実際問題として「ランナー膝がなかなか治らない」とお悩みの人は少なくありません。
何をしても良くならないランナー膝で途方に暮れている人は、一度以下を実践してみてください。
通院先の変更
ランナー膝の治療は、病院やクリニックなどの医療機関。または接骨院や鍼灸院などの代替医療機関で受けることができます。
ただし、ランナー膝に対しての治療方法や方針は、10の施設があれば10パターンあるとお考えください。
そのため、ランナー膝を早く治したいと通っている施設で思うような効果がでない場合は、通院先を思い切って変更してみることをおすすめします。
ただし、早期に見切りをつけることはNGです。
2~3ヶ月ほど通院を続けて、それでも思うような結果がでない場合に通院先の変更を行うようにしましょう。
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情報を整理・選別する
「ランナー膝 改善方法」などをネット検索すると、ストレッチ方法をはじめとした多くの情報が入手できます。
ランナー膝で長期間お悩みの人ほど、多くの情報を入手して実践されていることでしょう。
ランナー膝の改善方法は、専門家のなかでも考え方や方針が異なります。
そのため、考え方の違う専門家同士の情報を混同して実践すると、ランナー膝の治りを悪くしてしまう可能性もあるのです。
そのため、なかなかランナー膝が治らない人は、一度情報を整理して「この人が言っていることだけを信じて実践してみる」などの選別を行うことをおすすめします。
一定期間ランニングから距離を置く
毎日走らないと不安になる、誰かから責められる気がするなど。ランニングをしないことへの焦りや恐怖心から、ランナー膝になっても中途半端にランニングを続ける人は少なくありません。
痛みが少し緩和するとランニングを早期に開始して、また痛みをくり返す。このような状況が長期間続くことで次第に難治性のランナー膝になります。
そのため、ランナー膝がなかなか治らないときは一定期間ランニングからは距離を置く生活をすることも大切です。
他に趣味を見つける、近頃できていなかったことをするなど、少しランニングのことを忘れてみましょう。
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まとめ
ランナー膝の治療&期間やストレッチ方法についてご紹介させていただきました。
「ランニングをしている以上、ランナー膝とはうまく付き合っていかなければならない」と考える人もいますが、原因を明らかにして対処すればランナー膝をくり返さないことは十分に可能です。
まずは、ランナー膝はオーバーユース(使いすぎ)が原因で起こるという固定概念を捨てて、さまざまな角度からランナー膝の原因を探ることをおすすめします。
あなたのマラソンライフが楽しいものになりますように応援しています!